退職給付債務等の計算における割引率の当面の取扱い継続について

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退職給付債務等の計算における
割引率の当面の取扱い継続について

国内金利においては、日銀における金利緩和政策の下、比較的期間の短い国債利回りにおいて、マイナス金利の現象が生じ続けています。

このような状況下、退職給付債務等の計算において利用する割引率は、企業会計基準で、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定することが示されており、当利回りは、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りを明示しているため、割引率としてマイナス値を利用することを検討するケースが生じています。振り返りますと、当割引率基準を制定された時期においては、(あくまで私見ですが)金利がマイナスになることを想定していなかった、すなわち、“割引“ではなく、”割増“となることを想定していなかったため、ここ1年対応の整理が必要となったものと考えているところです。

企業会計基準委員会では、このような状況が生じた中、対応整理として、平成29年3月29日に実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」を公表しました。ここでは、『退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法による。』と整理していました。また、適用時期として、「平成 29 年 3 月 31 日に終了する事業年度から平成 30 年 3 月 30 日に終了する事業年度まで限って適用すること」との有限期間としており、以降は引き続き検討を行うことと整理しました。

しかし、マイナス金利の状態は長期化しており、今後の施策動向、金利動向も見据えていく意を含め、企業会計基準委員会では、平成30年3月13日に実務対応報告第37号「実務対応報告第 34 号の適用時期に関する当面の取扱い」を公表し、「退職給付債務の計算に重要な影響を及ぼさず、当該取扱いを変更する必要がないと当委員会が認める当面の間は、適用する」とし、明示的な期限を設けない扱いとしました。なお、今後、マイナス金利を巡る環境に大きな変化が生じ、現状の金利水準が大幅に低下する等の大きな変化が生じる状況にない間の、当面の取扱いとして適用するとコメントしています。

3月決算を見据えると、今年度末(平成30年3月末)の金利水準は、昨年度末(平成29年3月末)と大きな変化は見受けられません。今年度末決算においての適用割引率の決定に際しては、マイナス金利の扱い方について昨年と同様な考え方に基づく法人が多いものと考えられます。なお、マイナス金利をゼロとみなし適用している場合、今後のマイナス金利現象の解消やイールドカーブの形状変化が伴うと、退職給付債務等の変動が世の中の金利変動感覚とギャップをもたらすことも考えられるため、留意しておきたいところです。

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