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企業結合会計の大幅改正

2015年4月1日以降始まる事業年度より財務諸表の表記や企業結合会計処理等に関する大幅な制度改正があります。財務諸表の表記として主要な改正項目は、

[従来基準]
少数株主控除前当期純利益
当期純利益
少数株主持分

[改正基準]
当期純利益
親会社に帰属する当期純利益
非支配株主持分

この他、企業結合会計処理に関する主な項目は、子会社支配権獲得後の非支配株主との取引を資本取引として捉え、そこからのれん等を生じさせずに、取引差額を資本剰余金として処理する等、会計処理の面でも変更があります。
これまで、少数株主持分の純資産への表示や子会社の全面時価評価法など、経済的単一体説の下に各種制度改正(アドプション)が行われてきましたが、今回の改正は、その色彩をより一層表しているものと思います。

ここで、日本における連結財務諸表主体の考え方の変遷を考察したいと思います。
日本の伝統的な企業会計の下、連結財務諸表主体は、親会社説(的な考え方)が採用されていました。 親会社説の下では、のれんや支配獲得時の子会社評価替は、親会社持分のみを計上します。 また、従前の会計基準では、少数株主持分を負債に計上し、純資産の部は純粋に親会社持分相当のみを表示していました。 さらに少数株主損益を営業外損益扱いにし、少数株主損益控除前当期純利益の表示もありませんでした。

この頃の連結会計処理には理論的に幾つかの問題がありました。 問題の一つとして、一部比例連結問題を取り上げてみたいと思います。
例えば、75%持分の子会社保有固定資産について、
簿価 :60億円
時価 :100億円
連結時に30億円=(100億-60億)×0.75の評価増しを行い、連結上の固定資産簿価を90億円と表記します。
このような評価方法を部分時価評価法といい、この評価方法における固定資産簿価90億円の内訳を下記に示します。

子会社簿価 60億(対する少数株主持分 15億)
固定資産評価替 30億(対する少数株主持分 ゼロ)
部分時価評価法
評価替に少数株主持分を計上しないことから、90億円という意味の分からない金額がFSへ計上されてしまいます。科目別に自社持分だけを計上する方法を比例連結といい、以前はジョイントベンチャーの会計処理で認められていました。連結子会社処理と持分法処理の中間的な連結処理とでも言いましょうか。
これについて、評価替え部分と元々の簿価部分で処理を変えた結果、一部比例連結(逆に、一部完全連結)処理となり、結果として、FS計上金額の合理的な説明を困難にしていたのです。

→時価100億円のうち、評価差額に当たる40億円の25%(他人持分)10億円を除いた90億円を計上。それって何の意味がある金額?

そんな会計処理の時代から、子会社の全面時価評価法を採用し、評価差額に対しても少数株主持分が計上できるようになったのはつい最近の話です。
時代は流れ、IFRSアドプション時代に入ると、経済的単一体説へと加速度的に改正が進みました。経済的単一体説では、財務報告主体を経済単位とする考え方の下、連結上の純資産や利益は一義的に持分分割せずに総額表示し、その内訳として親会社持分と非支配株主持分を表示します。ここに比例連結的な発想は存在しません。

今回の改正は、経済的単一体説への最終章とも思える程、思い切ったものです(あとは、のれんの処理くらい?)。当期純利益の意味を変えたくらいですから。ただ一つ、支配獲得後の非支配株主との取引を資本取引として処理する点については、計算結果が持分法と整合性がとれず、システマティックに計算できないといった、ある種の欠点?も指摘できます。万人に納得してもらう基準作りは難しいものです。

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