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一物一価の法則と企業会計

一物一価の法則とは、特定時点における同一の財やサービスの価格はある前提条件のもとに一つしか成立しないとする経済法則です。ある前提条件とは、情報の非対称性は存在せず、財やサービスのブランドなどの差別化は存在しないことです。高度に発達したeコマースなどを考えると、一物一価は容易には成立しません。ただし、これが一企業(いちきぎょう)の財務報告で崩れてしまったら大きな問題があります。

現代の企業会計では、退職給付債務の計算、リース物件の評価計算、資産除去債務の計算など、様々な局面で割引現在価値の計算を行っています。とある会社では、退職給付債務は社債の利率で、リース物件は国債の利率で、デリバティブの時価開示はLiborで、といったように、割引率に使用する金利もまた様々です。様々な金利が使用されているのは、退職給付に関する会計基準の適用指針に代表されるように、科目毎に使用する割引率に関する指針があるからです。
おかしいと思いませんか?

例えば、5年後の1,000万円を評価して財務報告をする場合、退職給付債務であろうと、リース物件であろうと、デリバティブであろうと、同じ評価額になるハズです。 将来のキャッシュフローは、各種リスク等を加味した期待キャッシュフローを使います。5年後の期待キャッシュフローを入手可能な確率情報を使用して算定するまではいずれも同じ考え方で行います。問題は期待キャッシュフローが算出された後に割引計算で使用するリスクフリーレートが科目毎にバラバラなのです。これは、貨幣の時間価値についての一物一価が崩れていると言えます。企業にとってのリスクフリーレートは複数存在してはいけないのです。

実はこの話、現実の財務報告の事例として少なくありません。オンバランスと補足情報は、百歩譲って(納得できる前置きを書いた上で)違うリスクフリーレートを使用するのを許容したとしても、公正評価・償却原価を問わず、オンバランス項目にバラバラのリスクフリーレートは言語道断だと思います。
会計人の皆さん、監査法人に助言されたとしても「一物一価の法則」を貫いていただくよう、お願い申し上げます。

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